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橋本千毅 漆工芸作家 橋本 千毅 Chitaka Hashimoto
1972 東京都多摩市に生まれる
1995 筑波大学芸術専門学群卒業
2000~2001 東京文化財研究所にて漆工品の修復に携わる
2001~2005 高岡短期大学産業造形学科 助手として勤務
2005~2006 富山大学芸術文化学部 助手として勤務
2006 漆芸家として独立
2007 富山県富山市に工房設立
2010 三笠宮崇仁親王殿下に作品を献上する
受賞・入賞など多数  個展・グループ展など多数

[ 研究時代 ]
私が大学で助手をしていた頃、毎日のように、昔の漆工品をマイクロスコープで観察していました。過去の漆工品を観察し、制作方法を推測し、仮説を立て、検証し、実作する。言ってみれば実験考古学のようなものでしょうか。いつも自分らしい方法で漆工芸を追求しようと考えていました。というより、伝統的な習得環境を得ることができなかったので、そのような方法を選択するしかなったのですが。

身の回りにモノが溢れている現代で、なぜ自分が漆工芸の方向に人生の舵をきったのかという問いに、答えを持っていません。気付いた時には漆の引力に引き寄せられていました。私が漆工芸の道に入ったのは、大学を卒業してからです。その時は一人前に仕事が出来るようになるまでを、とても遠い道のりに感じていました。ただ一つ幸運だったのは、大学を卒業した時点である程度の問題解決能力が身についていたことだと思います。コツコツと理論と実践を積み上げていきました。決してうず高く積み上げるのではなく、ピラミッドのように丹念に土台から積み上げるよう心掛けました。しかし、あまりにも熱中し過ぎ、給料のほとんどが道具や材料や書籍や古美術品へと姿を変え、気付いてみれば、倉庫代わりにわざわざ部屋を借りるほどになっていました。

今思えば、文化財修復に関わったり、大学の教職に就くなど研究する機会には恵まれました。しかし、漆工芸に関わってちょうど10年が過ぎたとき大学を退職し、作家として独立しました。そのころから「市場で作品の価値が認められなければ、本当の意味で“漆芸家”とは言えない」という認識をはっきりと持つようになっていました。私は決して楽観的な人間ではありませんので、そのような考えに至ったこと自体が、ある意味、自信の萌芽と言えるのかもしれません。

[ 独立後 ]
私の作家としての始まりは小さな借家からでした。こぢんまりとしていましたが、心が落ち着く場所で、とても穏やかな毎日を過ごしました。ここで、人生で初めて心の“休暇”をとりました。制作の合間に木工と金工を習いに行き、時間のあるときは図書館に通い、喫茶店で読書をしました。
様々な人と出会い、様々な価値観を知りました。

漆工芸に関しては、その頃にはすでに作品の構想は明確にあったし、知識や技能もある程度は身に着けていたので、それを丁寧に一つずつ作品に置き換えていきました。苦しい時期もありましたが、自分が思い描いた美しいものをそのまま具現化することだけを考え、妥協はしませんでした。それはとても地道な作業でしたが、作品が完成する度に、確実に前に進んでいる実感がありました。そして、作品が売れる度に少しずつ制作環境を整え、また淡々と次の作品をつくっていきました。

振り返れば、今またそれから10年が経ち、気付けば家族ができ、自分の工房を持っています。勿論いまだ道半ばではありますが、これまでも多くの作品をつくらせていただきました。ご支援下さった方への感謝の気持ちをいつも忘れることはありません。良い作品を作ることだけが、ただ一つ私ができる恩返しです。
今後も襟を正して精進していこうと思っております。

インターネットを通して作品を発表する機会が得られたことは、とても幸福なことだと感じております。関係者の皆様には心より感謝申し上げます。

2015年3月

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